スーツの丈には、基本のルールがあります。多少は流行に左右される部分もありますが、残念ながら袖丈やパンツ丈のバランスが良くない方をよく見かけます。私がお客様のパーソナルスタイリングに同行して、ショップで丈のお直しをよく観察していると、お店によって、また同じお店でも販売員によって丈の取り方や長さが相当違うのがわかります。残念ながら、販売員の知識や感覚も千差万別なのです。ですから、販売員にお任せするのではなく、あなた自身がぴったりとした丈の長さを知っておく必要があります。丈が長すぎたり、また反対に短すぎたりしても、子供っぽく頼りない感じや締まりのない感じに見えてしまいます。ほんの数センチの違いであなたのイメージを台無しにしてしまう可能性があるのですから、ぜひ注意して頂きたいところです!
彼や彼女達の流行の波は驚く程早い。「だからね、波の外でしばらく待っていればいいのよ。買わなくて良かった、と必ず思えるときがくるから」と賢いアドバイスをしてやるのだけど、半分だけ納得して、半分は気がそぞろなようだ。我々、ある程度のおしゃれの経験者は、ブランド品を買っても、それを使いこなす術を心得ている。元を取り戻さなくちゃ。だから流行というものに左右されない。自分の中で飽きないように、失敗しないようにと選択眼で買い求めるだけ。ただし私の場合、晩生だった分ブランドの良さに夢中になりやすい。つい最近、初めて買ったグッチの靴の履き良さに感激、できればもう何足か欲しいけれど、取りあえず我慢の子を続けている。ダナ・キャランの服も初めて買って、好みのデザイン(セクシーでないおとなしめ)のものもあることを知る。それからは目が離せなくている。
むかしむかし、今から百五十年ほど前のこと。海の向こう、グレートブリテン島にあるイギリスという国で、「ラウンジースーツ」という男性服が誕生した。はじめ卑俗な服として軽んじられていたこの服は、またたく間に昼間の正装として王者の地位にのし上がり、二十世紀に入って、男の標準服として全世界を制覇した。支配は日本にも及んだ。明治維新政府が、服制をイギリスに学んで洋装化をすすめた結果、この服は日本においては「背広」あるいは「スーツ」と呼ばれて、戦後にはあらゆる成人男子が必ず一着は所有する定番服となった。まさに二十一世紀に突入しようとする現在、スーツのバリエーションは無限に増え、着られ方も多様になった。スーツ文化が豊かになるとともに、スーツーフリークという人種も登場した。