結婚にかんしては、非常に細かい指示と説明がある。日常の礼儀や饗応の仕方をふくむ総合的な内容でも、「婚礼」「結婚」をタイトルに冠しているのが、この時期の冠婚葬祭マニュアルの特徴である。内容はどの本も似たりよったりで(著作権が確立していなかったせいなのか、一字一句たがわぬ文章だったりする)、伝統的な自宅結婚式を中心に、神前結婚式、キリスト教式結婚式の式次第が、一挙手一投足までくわしく述べられているのが目をひく。婚礼前の諸事(見合い、結納、荷物送りなど)、花嫁花婿の服装、結婚式の諸式、結婚式後の心得(里帰り、里開き、婿入りの式、門見せの礼など)、本によっては各種届け出(婚姻届、入夫届、転籍届、分籍届など)の書式。結婚生活の秘訣からイラストつきの帯の結び方や髪の結い方まで、これでもかというほどの執拗さだ。だが、重要なのはそのことではない。このころの類書は、「婚礼」というイベントのマニュアルである以上に、「結婚」のマニュアルなのだ。巻頭には「結婚とは何か」みたいな説教がたっぷり出てくる。「新時代の結婚の心得」を広めるぞとの意欲が、そこにはみなぎっている。
「あの子は若いのにできた子だ」と、知人の女性が、会社の人の葬儀のあとで評判になっていた。彼女は、葬儀に参列しただけでなく、誰にも言われなかったのに黒いエプロンを持参し、「何かお手伝いすることはありませんか」と申し出たのだ。若い人はそういった場であまり期待されていないだけに、まわりの人の印象に残ったのだろう。社内の人が亡くなったり、上司や同僚の身内に不幸があったりという場合は葬儀に参列するのはもちろん、自分のできる範囲で手伝う気持ちを忘れずに。通常、社内で誰が何を手伝うかを決めるが、取り込んだ事態なので、何が起こるかわからない。受付や案内係、飲食の準備や片づけなど、やらなければいけないことはたくさんある。黒いエプロンの例のように、「いつでも手伝う」という準備はいざというときに役に立つ。
あるマナー研修を引き受けたときのこと。当日その研修の担当者に会うと、ギラギラに光るノースリーブのミニワンピースで現れ、打ち合わせをしているその場の人たちは、「今日の主役?」と言いたげな雰囲気で固まってしまった、ということがあった。ビジネスの場でのファッションは、「目立つ」ことが目的ではない。自分の好みよりも、「相手がどう思うか」を考えることは、ファッションに限らず、社会人としての基本。ビジネスの場では、さまざまな年代の人に会う。保守的な人にも好感を与える服装を整え、清潔感を保つこと。これが「身だしなみ」であり、「おしゃれ」とはまた別のものだ。どんなにおしゃれなブランドものでも、ボタンがとれそうなジャケット、毛玉いっぱいのセーター、食べこぼしのシミがついたパンツ、シワだらけのシャツなどはすべて不合格。手入れの行き届いていない印象は、あなたの仕事への評価まで左右してしまう。まずは清潔感を演出する服装を心がけることが第一だ。